その6 野性のニワトリ獲り

山里の農家から逃げ出した10羽ほどのニワトリが、野性化して山に棲みついているという情報が入ってきた(逃げられたその農家から)。逃げ出してかなり経っているらしかった。鹿児島ではニワトリというと薩摩地鳥(茶色で気性の非常に激しい鶏、別名ケンカドリとも言う)である。そうと聞けばさっそく捕まえに行こうと言うのが父親であった(やっぱり変なオヤジだ)。仲間3〜4人と高校生の私を従え、さっそくみんな棒切れと投網といういで立ちで(父親は投網もやっていた)大の大人達が、それこそ山に投網を持ち込んで、これから始まる何とも滑稽でバカバカしい大捕り物に胸弾ませながらその山に向かったのであった(今思うとみんな真剣だったのでなおさら滑稽)。

鳥目という言葉があるように、当然その大捕り物は夕方から始まった。棲みかとなっているのは杉混じりの山中、ソーッと近づいて行くと確かに木の上に何羽か止まっているのが見えた。しかしチョット困ったことになった。地べたに巣でも作って寝ててくれれば投網で万全、と思ったのが甘かった。木の上ではちょっとムリ。しかたなく投網を広げて反対から棒で叩こうということになり、さらに近づいていくと気配を察して逃げていくのであった。そしてその逃げ方にそこにいた全員がビックリさせられたのである。

なんと、本当に飛んで行くのである。それも半端な飛び方ではない。100メートルはゆうに飛ぶのだ。確かにニワトリは鳥である。しかし鳥だといっても飛べない鳥のハズである。それを見てみんな驚いたと同時にもうヤケクソになっていた。飛んで行こうが何だろうが、ニワトリごときを捕まえられないハズはないと、それこそ今度は「あっちだ」「こっちだ」と山の中をかけずり回りの大騒ぎになったのである。もし何も知らない人が近くにいて聞いていたら、いったい何事かと思ったに違いない。そう考えると今でも可笑しくなってくる。

結局、何も収穫なく全員疲れて山を降りた。

その後私の家で焼酎のビンがどんどんカラになっていったのであった。